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2008年12月

タイムカプセル - 25

 二人が戻って来たのは、日が明けた12時半だった。

 二人とも、もう絶好調の様子だった。

 私たちはリビングで、テレビの深夜番組を見ていた。

 父がリビングに来ると、みんなに言った。

「みんな、集合!」

 は? 何事かと思いながら、父を見る。

「みんな、清水家の主から話がある。ソファに集まるんだ。」

 酔っ払いに付き合ってらんない、何なのよ、と思いながら、とりあえず言われた通りにする私たち。

 長いソファに私たち3人、反対側に父と剛が座った。

「お父さんは、剛君と亜沙美の結婚を認める。剛君は今日からうちの家族だ。異議は認めない。いいな。」

 父は最後のところでちょっと強い口調になって言った。

「分かったら、返事しなさい。」

「はい。」

「はい。」

「お父さん、ありがとう。」

「ありがとうございます。」

「剛君、今夜はうちに泊まって行きなさい。お母さん、剛君の布団の用意をしてあげろ。亜沙美と同じ部屋でいい。」

「で、でもお父さん。まだ結婚前なのに・・・。」

 母が躊躇していた。

「ばーか。いいじゃないか。もう結婚するって決まったんだから。剛君、亜沙美に何しても構わんぞー。父親の俺が許す。」

「ば、ばか。お父さん、何言ってんのよ。」

「お父さん、じゃあ、そうさせてもらいます。」

「もう、剛までえ。」

「おー、頑張れ。早く孫の顔を見せてくれー。ただ、近所迷惑にならん程度にな。」

 何なの、この男の会話は。もう、信じらんない。

 12時を回ったこの日、もう私の誕生日になっていた。剛からのプロポーズは一日早くなってしまったけれど、記念すべき誕生日になった。幸せだった。

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タイムカプセル - 24

 3人で作った豪華夕食を、5人で食べた。

 四角いテーブルに、いつもなら私と奈津美がこっち、そして両親が向こう側に座るのに、今夜は、剛と私が並んで座り、母と奈津美が向こう側、父は一人でお誕生日席に座った。こんな、普段とは違う雰囲気が、剛の存在をより浮き立たせる気がした。

 5時からずっと飲み続けている剛と父は、7時を過ぎて夕食の時間になると、もうかなり良い調子になっていた。

 剛が飲める人で良かったと思った。父は昔からよく言っていたのだ。私や奈津美が結婚して父に義理の息子ができたら、一緒に飲みたいと。女性陣の私たちも飲めるけれど、やっぱり男同士でと言うのが良いらしい。本当は息子の一人でも欲しかったようだけど、申し訳ないけれど、私たちは二人とも女の子だった。まだ剛は義理の息子になった訳ではないけれど、それでも父のこの雰囲気は、もうそれを楽しんでいるように思えた。

 そして、案の定、食事が済むと、

「よし。剛君、もう少し飲みに行くか。」

 と、父が剛を誘った。

 時間はまだ9時だ。土曜日だし、明日も休みとなると、確かにもっとゆっくり飲める時間ではある。

「え〜、私やだよ。このままうちで飲めばいいじゃん。」

 私はもう動きたくない気分になっていた。それに、これからアパートに戻らないと行けないと言うのもあった。

 そうすると、父が、

「おまえには聞いとらん。剛君に聞いとるんだ。」

 と言った。

「な、剛君。男同士で飲みに行こう。」

「は、はい。是非。」

 何? そういうことだったの? 私は必要ないんだ・・・。何だか不思議な感じがした。

 結局、父と剛は二人で何処かに飲みに行った。

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タイムカプセル - 23

「お姉ちゃん、すごいじゃない。びっくりしたよ。急に、彼氏連れてくるなんて。」

「うん。私もこの展開にはちょっと驚いてる。」

「私のせい?」

 母が言った。

「お母さんのせいというか、何というか。ただ、今回こうなるとは思ってなかったかな・・・。」

「お母さんだってびっくりしたのよ。亜沙美の部屋に、いきなり知らない男が裸でいるんだもの。」

「ほんとなの? お姉ちゃん?」

「裸って、上半身だけでしょ? 大げさだよ。もう。」

「でも、お母さんも安心したわ。剛君、良い人じゃない。」

「うん。私も高感度抜群だと思った。」

 奈津美も言った。

「ほんと? ありがとう。そう言われると、私も嬉しい。」

 良かった。とりあえず、みんな剛のことを気に入ってくれたらしい。あれだけ盛り上がっているから、父だってきっとまんざらでもないはずだ。

「お姉ちゃん、剛君と結婚すんの?」

 と、奈津美が聞いた。

 そう聞かれても、まだ何と返事したらいいのか分からなかった。この段階では、まだ両親の承諾を得たとは言えないはずだ。もうちょっとだと思うけれど、まだだ。そう悩んでいると、いきなり隣で奈津美が叫んだ。

「お、お姉ちゃん。これー。」

 そう言って、私の左手を取った。まじまじと指輪を見ている。

「これって、婚約指輪なの?」

 奈津美が聞いた。

 母もその声に驚いた様子で、奈津美が持ち上げている私の手を見ていた。

「うん。今朝、もらったの。」

「す、すごーい。ダイヤ、かなり大きいよ。」

 奈津美は一人で興奮していた。

「もう、お返事したの?」

 母が聞いた。

「うん。」

「そう・・・。」

 母がしんみりと言った。

 気が付くと、母が泣いていた。それにつられて、私も泣いた。奈津美までが泣いていた。女3人、キッチンで夕食の支度をしながらひとしきり泣いた。

「亜沙美、おめでとう。」

 母が、キャベツを切りながら、私のことなど見ることもなく、キャベツに向かって言った。

「お姉ちゃん、おめでとう。」

 奈津美も同じように、鍋の中のジャガイモに向かって言った。

「ありがとう。」

 私は、剛にもらった指輪を見ながら言った。

 この家は、男1人女3人だから、いつも私たち3人が中心になって全てが回っていた。私たちはまるで姉妹のようにいつも一緒だった。私が東京の大学に行くことになって、その形が崩れたけれど、やっぱり私たち3人はこうやって一緒にいるのがしっくりくる。母や奈津美の気持ちが、痛いように分かった。

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