タイムカプセル - 22
母がキッチンに立ち、お茶の準備でもしてくれているようだった。
「私は亜沙美の父親の清水恭助です。仕事は二菱自動車販売会社の営業所長をしています。どうぞよろしく。」
「え、そうなんですか? 僕の父も東京の二菱自動車販売会社に勤務しているんですよ。」
「お、そうなのかい。そりゃあ、奇遇だなあ。」
そうなんだと思った。剛の家族のことなど、私はまだよく知らなかった。男兄弟3人の真ん中だとは聞いたことがあったけれど。
「二菱の車は、やっぱりあのバケットシートがいいですよね。」
「お、剛君。なかなか分かるね。そうなんだよ。あれは他社にはない二菱だけの技術だからね。やっぱりあれくらい硬いシートじゃないと、高速には耐えられないからねえ。」
「そう、そうなんです。普段はそんなに感じなくても、高速に乗った時のあとシートの安定感は二菱だけですよね。」
「だから、F1でも二菱はなかなかいい成績を出してるんだよ。軽くて硬い、その素材を開発した技術は世界に誇れるものだよ。」
父と剛が私には訳の分からない話で盛り上がっていた。
そこに母がお茶とお菓子を持って戻って来た。
「さあ、どうぞ、お召し上がり下さい。」
「はい。おりがとうございます。」
返事をする剛。
する、それを遮るように父が言った。
「葉子、何やってるんだ。酒にしろ。ビールとおつまみを出さんか。なあ、剛君もいける口なんだろ?」
「え、ええ。」
「ほらみろ。子どもじゃあるまいし、客が来たらまず酒だ。早くしろ。」
「はい、はい。」
母は素直にキッチンに戻って行った。何だか母に申し訳なかった。
お酒とおつまみが運ばれて来ると、宴会が始まった。母も妹も飲める方なので、5人でまだ明るい内から飲み始めた。
母と私は30分くらいしたらキッチンに立ち、夕食の準備を始めた。しばらくすると奈津美も来て、手伝い始めた。父と剛がまた車の話で盛り上がり始め、付いていけなくなったらしい。
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