タイムカプセル - 19
「あなた、夕べここに泊まったんでしょ?」
母が剛を見て言った。
「はい。」
「はいって。あなたどういうつもりなの? 亜沙美はまだ結婚前なのよ。はしたない。」
今時そんな・・・と思ったが、母の時代はそうなのだ。仕方ない。
「すみません。でも、僕は亜沙美さんとは結婚を前提として、お付き合いしたいと思っています。」
え? 剛? 何? ほんとなの? 私だってまだ何も聞いたことないわよ、そんなこと。
「結婚を前提って・・・。そうなの、亜沙美?」
母が私のことを見た。
どう返事したらいいのよ? と思いながら、
「え、まあ。」
と、とりあえず曖昧に返事した。ここでまだ聞いていないとは言えないし、それはそれで嬉しいけれど、あまりにもいきなりの進展ぶりに、何が何なのかよく理解できずにいた。私はとても混乱していた。
「結婚を前提というのは、親の承諾を得てからの話でしょ? 私もお父さんもまだ何も聞いてないわよ。順番が違うんじゃないの?」
母がきつい顔をして剛を睨んだ。剛、ごめんね、こんなことになって・・・。隆一の時といい今回といい、どうして剛はいつもこんなことになるんだろう。何だか、彼に申し訳なかった。
「申し訳ありません。」
剛が神妙に言った。
「あなたいつまで長崎にいるの?」
「月曜日には東京に戻ります。」
「じゃあ、今日か明日にでもうちのお父さんに会ってちょうだい。お父さんが認めない限り、私だって認めませんからね。こんなこと・・・。分かったわね。」
「はい。」
剛が返事した。
「亜沙美も分かったわね。」
「うん。」
「じゃあ、私、帰るわ。」
母は一人でがーっとしゃべって、言いたいことだけ言うと出て言った。ずいぶん怒っている感じだった。確かに母の性格だったら、こんなこと許せないのかも知れない。しかし、自分の娘の彼氏なんだから、もうちょっと優しく扱ってよという感じだ。
母が出て行った後、私たち二人はしばらく放心状態でぼ〜っとなっていた。
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