タイムカプセル - 15
「亜美さん、大丈夫?」
剛が私の顔を覗き込んだ。
「たぶん。」
きっと私の顔は酷い状態になっていたと思う。自分ではもう顔の感覚がなかった。
「ちょっと待って。」
と言うと、剛が消えて行った。
しばらくすると、濡れタオルを持って来て、
「ほら、これ。」
と、私の顔を拭ってくれた。
かなり血が出ていた。口の中のぬるっとした感触は血だったんだと、初めて気が付いた。鼻血まで出ていて、殴られて血を出すなど生まれて初めてで、タオルに付いた血を見て、何だか怖くなった。
まだ感覚の戻らない顔の感じと、今さら感じた恐怖感と、剛に対しての申し訳ない気持ちで、涙が溢れた。
「ひっで〜、なんで女にこんなことできんだよ。女に手を上げるなんて最低だよ。」
剛が言った。
「剛君、ごめん。こんなことさせちゃって。ごめん・・・。」
最低な私。結局、剛を利用したのかも知れない。それでも、タイミングが悪かっただけなのだ。もし隆一が今朝来なかったら、自分一人で隆一のことを片付けて、それから剛とこうなることだってできた。ただ、夕べの今朝では、あまりにもタイミングが悪過ぎた。
「いいよ。亜美さんのこと好きになった時から、きっとこんなことなしには手に入れられない人だと思ってたから、実はずっと前から覚悟してた。ただ、まさか、ほんとにこうなるとは思ってなかったけどね。」
二人で玄関の床にへたり込んだまま、私たちはずっと抱き合った。
剛の体がとても暖かかった。
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